嘘ブログ

朝起きたら外には雪が積もっていました。夜に燃やした豆炭は冷めてしまっていて、新しい豆炭でアンカを作るために外に出ました。豆炭アンカは湯たんぽの石炭版のようなもので、朝作れば昼時まで暖かさが持続します。外は想像より寒くなく、雪の白が光を弾くのでいつもより明るく感じました。

ココアを作って本でも読もうかと考えながら、マッチで豆炭に火をつけて燃えるのを見ていると、夫も眠たそうな顔をして家から出てきました。夫は"私が火を眺めている様子"が好きなんだそうです。私は"夫が本を読む様子"が好きです。だから実は、私が本を読むのは夫の真似をしたいだけなんです。火を見ながら私は書斎に行ってもいい?と聞いて、夫はいいよと言いました。

夫には5人の妻がいます。私たちは森の中の屋敷に住んでいて、知らない人に会うことはほとんどありません。いつも10人程度いる召使いは頻繁に入れ替わっているようですが、夫以外が彼らと話すことはありません。今の召使いはほとんど男性で一人だけ私と同じくらいの年齢の女性がいます。彼女は特に夫の身の回りの世話をしているようで、夫の近くにいるのをよく見かけます。

私は4番目の妻で、他の妻たちと同様に指輪をもらい式を挙げ結婚をしました。夫が私の名前を呼ぶことは滅多にありません。きっと妻の名前を呼び間違えたくないからだと思います。他の理由があるのかもしれませんが、あまり考えても意味がありません。名前を呼ばなくても愛することはできますし、たくさん妻がいてもひとりへの愛が減る訳ではないですから。私は5回に1回見つめてくれさえすればこれ以上望むものは何もありません。

夫は先月に仕事を辞めたので、以前より随分と私たちを見つめる時間が増えたようです。妻の中には外で仕事をしていて数ヶ月帰らない人もいますが、今は5人の妻が揃っています。私たちは広いお屋敷の中でそれぞれ自由に過ごし、夫は妻を見つけては抱きしめたりキスをして回ります。

書斎に来た夫はソファーの私の隣に座り本を読み始めました。私はもう飽きていたので本を閉じて夫の膝を枕にして、夫は私の髪を撫でながら本を読み続けました。